FC2ブログ

小説

ショートショート八つ。



   『嫌われ者』

   会社内のあるグループが険悪な雰囲気になった。
   Sという男がふざけて、仲間たちのあることないことを吹聴して回ったのだ。
   「誰があんな噂を流したのか」
   と皆、疑心暗鬼に陥った。すると当然のことながら、グループ内で一番性格の悪いSが疑われて、嫌われるようになった。
   Sは思った。
   「誰が俺を貶める噂を流したのだろう。Nがあやしい。Aもあやしい。Kもあやしい。なにしろKは部落出身らしいし…」
   SはKが四つ足で歩行しながら「ワンワン」と吠えているイラストを会社の壁に落書きした。
   会社中が騒然とした。そしてグループがKをいじめているという噂が立って、グループへの風当たりが強くなった。
   グループはますます険悪になった。そして当然のことながら、一番性格の悪いSが疑われて、ますます嫌われるようになった。
   Sは思った。
   「誰が俺を貶める噂を流したのだろう。Bがあやしい。Eもあやしい。Fもあやしい。なにしろFは……」



   『出過ぎた女』

   「LGBTは気色悪い」
   と、女性議員が発言した。彼女は場の空気を読まず思ったことをズケズケ言うクセがあった。
   「君。今回はマズイことを言ったねぇ」
   「私は正しいことを言ったまでです」
   「ここだけの話だがね……総理はゲイらしいんだよ」
   「えー!」
   彼女は落ち込んだ。なんてことを言ってしまったのだろうと後悔した。
   すると、総理が歩いているのが見えた。
   走って行って、大声で総理に言った。
   「総理! 私、総理がゲイでもいいと思います! 素敵なご趣味だと思います! 総理、ゲイ万歳でございます!」
   記者たちがざわついた。
   「ゲイ万歳! BL万歳! LGBT万歳!」
   翌日メディアは総理はゲイだと大騒ぎした。
   彼女は完全に出世コースから落ちこぼれた。
   


   『あやしいおじいさん』

   妖怪針ジジイと呼ばれているおじいさんがいた。庭に何百本という大きな針を置いているのだ。家の中にも置いているらしい。
   子供たちは庭を探検したが、たっくんが捕まった。
   数時間後、解放されたたっくんは、背中に龍の入れ墨ができていた。おじいさんがほったのだ。それからたっくんは泣きながらお尻をおさえていた。おじいさんがほったのだ。



   『寵愛』

   「レイプ事件を起こした私を助けて頂き、誠に有難うございます。ほとぼりが冷めたらまた貴方の本を書かせて頂きます」
   「ふふふ。私が君をこれほど寵愛する理由がまだ分からないようだね」
   と言って、男は後ろ手にドアを閉めた。
   「ま、まさか……来るな、気持ち悪い!」
   「LGBT差別反対ー!」
   「う、うわー!」



『眼科』

「先生。ぼくはもう失明するかもしれません」
「なに?そんなに深刻な症状なのかね?」
「キムタクの娘が可愛く見えるんです」
「はぁ?」
「IMALUとか愛子様とかも可愛く見えてしまうんです。あとオコゼも」
「それは特殊性癖だからクリニックに行きなさい」



『せめられる』

右翼の父が息子に言った。
「将来中国が攻めて来る。撃滅するために強い子になれ。道場に通え」
「えー!」
こうして息子は道場に通わされた。
また元自衛隊員の父から格闘術を仕込まれた。
息子は日記にこう書いた。
「先生。毎日お父さんに責められて大変です」



『医者の不養生』

「先生。癌かもしれないんです」
「それって被害妄想なんじゃないの? 私、最近多忙でノイローゼだし、診察どころじゃないんだよ。精神病院に行きなよ」
「はぁ」

「え? 被害妄想? 私、癌で余命わずかで、診察どころではないんですよ。他の病院に行きなさいよ」
「お前らが行けよ!」



   『大人』

   家族で出かけたにも関わらず、両親はイヤホンをしながらスマホのゲームをして、子供たちにかまわず先を行く。
   子供たちはつまらなそう。
   すると、三男が開いていたマンホールに落ちてしまった。
   長男がびっくりして、お父さんの尻を叩いてしらせたが、「うるさい」とばかりに手をはたかれた。
   次に二男が男たちに誘拐されてしまった。
   長男はびっくりして、お母さんの腰を叩いてしらせたが、お母さんは無視をした。
   次に、バイクが突っ込んできて、長男をはねて、そのまま逃げていった。
   信号が赤になって、足止めをくらった両親は舌打ちした。
   何気なく振り返って、いなくなった息子たちと、怪我をした長男を初めて認識し、びっくりして叫んだ。
   「だれがこんなひどいことをしたんだ!」
   「タカシ! だいじょうぶ?」お母さんがいった。「だれがこんなことをしたの?」
   長男は、あえぎあえぎいった。
   「お父さんとお母さん…」
   「なにをいってるの? そんなことするわけないでしょ!」お母さんは泣いた。「ああ! 私のかわいいタカシ。だれがこんなことを…!」
   長男は微笑した。
   「大人は話を聞いてくれない…たとえ子供たちが死ぬまぎわでも……」
スポンサーサイト
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール
ブログタイトルは夏目漱石の「黙々として牛の如くせよ」から。

野間

Author:野間

最新記事
最新コメント
カテゴリ
リンク
FC2カウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Amazon.co.jpアソシエイト
フリーエリア
読書記録
野間の今読んでる本
管理人の電子書籍
ネコ図鑑
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる