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金城哲夫『吉屋チルー物語』



テレビで映画『吉屋チルー物語』をやっていたので見た(監督・脚本はウルトラマンを手掛けた金城哲夫)。イマイチだと思った。
情婦(チルー)と役人の恋がテーマだが、恋の具体的内容が描かれていない。二人の初対面の場面からいきなり時間がすっ飛んで二人が深く愛し合っている場面になってしまう。愛の形成過程が描かれないから二人に感情移入できない。で、その後もチルーが「愛してる」だの「苦しい」だの泣いたり、わめいたりするだけで、恋の具体的内容を描く事が回避される。感情の具体的内容は技量がないと描けない。だから技量のない監督は「泣く」「わめく」という小細工に頼って具体的内容を暗示するだけで具体的内容を描く事を避ける。
役人の妻が最初は憎んでいたチルーを許すがその心の変化の過程も描かれない。歌人としてのチルーの才能も描かれない。芸術は人間の感情や才能の具体的内容を描くものだがこの映画は感情や才能の具体的内容を描く事を徹底的に回避している。こんなものは芸術とはいえないだろう。
しかもチルーは恋に溺れるあまり人を殺して自分も自害してしまう。かつての昼ドラレベルの通俗さであって全く話にならない。樋口一葉の『にごりえ』の酌婦・お力は最初は恋に溺れ、恋に救いを求めていたが、やがて自分の甘えと共に恋を捨てて、現実的に生きようと覚悟していた。このような現実に生きる覚悟こそが本当に偉大な精神である。チルーの精神は恋に溺れて現実から遊離した稚拙な精神である。一言でいって「甘え」である。


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